スコットランド北部の高地、テインの近くに位置するグレンモーレンジィ蒸留所は、1843年、既存の醸造所をウイスキー蒸留所へと転換したウィリアム・マシソンによって創業されました。その名はゲール語の「Gleann Mòr na Sìth(静寂の大きな谷)」に由来すると伝えられ、その優美で繊細なスタイルによって、世界のウイスキー愛好家に長く愛されてきました。
蒸留所の歴史
ウィリアム・マシソンは、テインで栽培される良質な大麦と、近隣のターロジー・スプリングス(ミネラル豊富な硬水泉)に着目し、1843年にモランジー農場において蒸留所の建設に着手しました。同蒸留所は当時としては珍しく、二基の連続蒸留器の代わりに、通常のポットスチルを採用し、しかもきわめて背の高いスチルを設置しました。
十九世紀後半から二十世紀にかけて、グレンモーレンジィは徐々に国際的な名声を獲得し、二十一世紀に入るとLVMHグループの傘下に加わり、さらなる革新的な製品開発を続けています。
製造方法
グレンモーレンジィのシグネチャーは、スコットランドで最も高い部類に属するポットスチルにあります。その首の高さは5.14メートルに達し、しばしば「キリンの身長と同じ」と表現されます。この極端に高いスチルは、蒸留中に重い成分を還流させ、軽やかで華やかな酒質を生み出す役割を果たします。
十八年熟成版は、まずアメリカン・ホワイトオーク製の元バーボン樽で十五年間の熟成を経た後、選ばれた原酒の一部がスペイン産オロロソ・シェリー樽に移され、さらに三年間の追加熟成が行われます。最終的にこの二つの原酒が繊細にヴァッティングされ、深みと華やかさが共存する複雑な酒質が完成します。
歴史的背景
グレンモーレンジィは、スコッチウイスキー業界における「ウッドフィニッシュ(樽での追加熟成)」という概念を先駆けた蒸留所として広く認識されています。研究開発責任者ビル・ラムズデン博士は、樽材の科学的研究において業界を牽引してきた人物であり、その革新的なアプローチは、他の多くの蒸留所に影響を与えました。
豆知識
グレンモーレンジィの水源であるターロジー・スプリングスは、ミネラル分が豊富な独特の硬水です。蒸留所はこの泉の周辺の土地を積極的に保護しており、水源涵養のために古代種のハイランド牛を飼育しています。
十八年熟成版は、瓶詰めの段階ですべてのボトルが手作業で個別に検査されており、少量生産のプレステージ品として位置づけられています。
国際的な評価
グレンモーレンジィ十八年は、複数の国際的なウイスキーガイドおよびコンペティションで最高評価を獲得しており、その繊細さと複雑さのバランスは、高地スタイルの理想的な表現として賞賛されてきました。
「グレンモーレンジィのスチルは、時間そのものを繊細な蒸気に変える器である。」