シングルモルトウイスキーとは、単一の蒸留所において、大麦麦芽(モルト)のみを原料とし、銅製のポットスチルで蒸留されたウイスキーを指します。「シングル」は原料の種類ではなく、蒸留所が一つであることを意味し、「モルト」は使用される穀物が発芽させた大麦であることを示しています。この定義は、スコッチ・ウイスキー規則をはじめ、各国の法律で厳密に定められています。
製造は、まず「製麦(モルティング)」から始まります。大麦を水に浸して発芽させ、糖化に必要な酵素を活性化させたのち、キルンと呼ばれる乾燥塔で加熱して発芽を止めます。アイラ島などでは、この乾燥工程でピート(泥炭)を焚くことによって、麦芽にスモーキーな香りを移します。
続く「糖化(マッシング)」では、粉砕した麦芽をマッシュタンと呼ばれる糖化槽で温水と混合し、酵素の働きによって澱粉を糖に分解します。得られた甘い麦汁は「ウォート」と呼ばれ、次の発酵工程へと送られます。
「発酵(ファーメンテーション)」では、ウォッシュバックと呼ばれる発酵槽に酵母を加え、数十時間から百時間近くかけて糖をアルコールへと変換します。この工程で生成される液体は「ウォッシュ」と呼ばれ、アルコール度数は約八パーセントに達します。
シングルモルトは、その蒸留所の風土と時間、そして人の手が織りなす一つの物語である。
「蒸留」の工程は、シングルモルトの個性を決定づける重要な段階です。銅製のポットスチルは、その形状や大きさによって留出液の性格を大きく変えます。ウォッシュスチルで一回目の蒸留を行い、続いてスピリットスチルで二回目の蒸留を行うのが伝統的な手法です。マスター・ディスティラーは、この時に流れ出るスピリットの中から「ハート」と呼ばれる中心部分だけを選び、樽詰めの原酒とします。
最後の「熟成」では、選ばれたオーク樽の中で長い年月を過ごします。スコットランドの法律では、シングルモルトと名乗るためには最低三年間の熟成が必要とされていますが、実際には十年、十二年、あるいはそれ以上の熟成期間を経て初めて出荷されるのが一般的です。この熟成期間中に、スピリットは樽材から色と香味を得て、複雑さと深みを獲得していきます。